Bcg遺伝子によりコードされる自然抵抗性関連蛋白(Nramp)の機能的解析

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09660321
• 研究機関: 宮崎大学
• 研究代表者: 後藤 義孝 宮崎大学, 農学部, 助教授 (30142136)
• 研究分担者: 新城 敏晴 宮崎大学, 農学部, 教授 (10040859)
• キーワード: 抗酸菌 / 感染症 / 自然抵抗性 / 肺胞マクロファージ / NRAMP1 / マウス / 豚 / 遺伝子解析

研究概要

抗酸菌に対する自然抵抗性を支配するnatural resistance assosiated macrophage protein 1(NRAMP1)遺伝子は最初マウスで見い出された。最近、その相同遺伝子が人、鶏、牛、羊、豚などの動物においても見つかっているが、マウスのように自然抵抗性に関与しているのかどうかは分かっていない。ところで、豚はM.avium感染症の好発動物として知られているが、発病に至るプロセスは明らかではない。我々はNRAMP1遺伝子型が異なるマウスの系を利用して、同遺伝子がマクロファージにおいて抗酸菌の増殖を調節していることを見い出した。そこで今回は、豚の肺胞マクロファージを用いて同細胞のもつM.avium感染に対する感受性とNRAMP1遺伝子との関係について調べた。健康豚から肺胞マクロファージを採取し、人を含む動物から分離されたM.aviumを感染させ、10日目までの菌数を個体間で比較した。また、RT-PCRによりNRAMP1mRNAの肺胞マクロファージにおける発現量を健康豚と感染豚の間で比較した。また、同遺伝子の一部のシークエンス解析を行った。マクロファージ内におけるM.aviumの増殖パターンは、株により著しく異なり、豚由来株は良く増殖し、牛由来株はほぼ横ばい、エイズ患者由来株は全ての個体において減少の一途をたどった。豚マクロファージにおけるNramp-1 mRNAの発現量を健康豚と感染豚で比較したが、いずれも有意差はみられなかった。今回調査した豚のほとんどの例において、細胞内の菌増殖パターンが同じであったこと、感染、非感染を問わずNRAMP1のcDNA塩基配列に多様性がみられないことから、調査対象とした個体間における遺伝形質は同じであると考えられた。なお全身感染症例については現在も引き続き解析中である。

研究成果

• [文献書誌] Xu, DL.Goto, Y et al: "The effect of Bcg gene on antigen presentation of spleen adherent cells and peritoneal macrophages from M.bovis BCG-infected Bcgs and Bcgr mice" Veterinary microbiology. 59. 67-78 (1997)
• [文献書誌] Goto, Y.Xu, DL: "BCG vaccination of M.tuberculosis-infected Bcgs and Bcgr mice : the role of Nramp-1 (Bcg) gene." Thirty-secound u.s.-Japan cooperative medical science program Tuberculosis-Leprosy research conferece.32. 203-207 (1997)
• [文献書誌] Goto, Y., et al: "Effect of corticosteroid on the expression of Nramp1 gene in M.avium infected Bcgs and Bcgr mice." Thirty-third U.S.-Japan cooperative Medical Science Program Tuberculosis-Leprosy Research Conference. 33. 88-92 (1998)
• [文献書誌] Nakanaga, K., Goto, Y.et al: "Sequence analysis and Expression of Nramp-1 Gene in Bcgr and Bcgs Mice." The Journal of Veterinary Medical Science. 61(in press). (1999)