研究概要 |
ニワトリは代謝面において哺乳動物と異なる特徴を持っている。そこで代謝の中心臓器である肝臓の実質細胞の肝特異的機能の発現制御を明らかにするために、ニワトリ肝細胞の初代培養法を用いて発現制御の検討を行っている。まず肝初代培養報(単層培養法)について検討した。ラットなどの哺乳動物肝細胞の初代培養は5%炭酸ガス環境下でpH7.4の培地で行われるのに対し、ニワトリ肝細胞は開放型のインキュベータ-(炭酸ガスなし)中でpH8近くの弱アルカリ性無血清培地を用いて20日間の長期間培養できることを見いだした。その培養期間中、肝特異的機能発現の1つであるアルブミン分泌は培養開始後数日以内に一旦著しく低下した後、培養9日目より再び高濃度のアルブミン分泌を培養期間中示すという興味ある現象を見いだした。トランスフェリン分泌については培養開始後は低い分泌量であったが、培養8日あたりより著しく高濃度の分泌量を示した。ニワトリ肝細胞の培養中後期に見られるこれらの特徴は、ラット肝細胞の培養では見られない極めて興味ある現象である(藤井等、日本家禽学会誌、33、15-22(1996);Fujii et al.,Int.J.Biochem.CellBiol.,28,1381-1391,(1996)。これらの知見は、ニワトリ肝細胞が培養法と肝特異的機能の発現制御において、ラット肝細胞とかなりの差異があることを示しており、ニワトリ肝細胞に特有の遺伝子発現制御機構を示唆するものと考えられる。そこで経時的にニワトリ培養肝細胞よりmRNAを調製し、アルブミン遺伝子発現を制御している転写調節遺伝子、C/EBP,HNF1,HSF-1,-2,-3などがニワトリ肝細胞において機能している機構を検討し、ニワトリ肝細胞での遺伝子発現制御機構を明らかにする予定である。
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