ラットなどの哺乳動物の感細胞の初代培養は5%炭酸ガスインキュベーター中でpH7.4で行われるが、我々はニワトリ肝細胞は炭酸ガスなしの開放型のインキュベーターを用い、pH8近くの弱アルカリ性の無血清培地中で長期間培養できることを見い出し、報告した。この培養期間中、肝特異的機能の1つ、アルブミン分布は数日以内に一旦低下した後、9日目より再び高濃度の発現を見せ、この高い分泌は長期間維持された。このときのアルブミンm=RNAの発現もアルブミンタンパク量とパラレルな挙動を示した。このような現象はラット肝細胞では全く見られず、ニワトリの肝細胞が哺乳動物とかなり異なる代謝面での特徴を持つことの一例と考えられる。次に、現在問題となっている環境汚染物質が鳥類の肝臓代謝に及ぼす実験モデル系としての利用を考えた。そこで、ニワトリ肝細胞に対する環境汚染物質、ダイオキシンの効果を検討した。ダイオキシンは10^<-1>Mで肝特異的機能の1つであるアルブミン発現を抑制し始めるが、ハウスキーピング遺伝子の抑制は高濃度投与してもそれほど低下しなかった。それに対し、解毒系のグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)のm-RNAの発現がダイオキシン10^<-1>Mより高濃度で大幅に昂進することが認められ、ダイオキシンが肝特異的機能発現の抑制と細胞毒性を与えており、肝細胞の解毒系酵素が強く発現誘導されていることが認められた。さらに他の農薬等の影響も検討している(投稿準備中)このようにニワトリ肝細胞は鳥類の環境汚染物質の影響を検討する有用なモデルであることが示された。
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