OKT8は、ヒトsuppressor/cytotoxic T細胞(CD8)を認識するモノクローナル抗体(MAb)であり、ネコのCD8^+T細胞とも交差反応することが知られている。ネコに、このOKT8とウサギ補体を同時に投与することによって、一時的にネコ生体内からCD8^+T細胞を減少させることに成功した。 そこで、このCD8^+T細胞を消失させる実験系を用い、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)感染およびネコ伝染性腹膜炎ウィルス(FIPV)感染におけるその影響について調べた。 その結果・FIV感染ネコのCD8^+T細胞はplasma viremiaの持続に対して重要な役割を担っていることが明らかとなった。また、HIV感染と同様にFIV感染においてもCD8^+T細胞の産生する可溶性因子によりFlV増殖が抑制され、それはMHC拘束性でないことも明らかにした。FIPV感染では、ウイルス感染後3日目から9日目においてCD8^+T細胞の著しい減少が認められた。この減少は感染耐過個体に比べ、FIP発症個体で特に著しかった。また、OKT8投与によるCD8^+T細胞の減少後、その細胞数が再び回復した個体はFIPを発症しなかった。しかし、CD8^+T細胞数が回復しなかった個体ではFIPを発症した。 これらの結果は、FIVおよびFIPV感染におけるCD8^+T細胞の働きとその役割の一部を示したものであり、その重要性が示唆された。
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