癌を含め腫瘍に於いて、血管新生なくして腫瘍の進展、増大は認められない。すなわち、血管新生を人為的に制御することができれば、癌を含めた多くの腫瘍の脅威から生物を解放することができる。本研究者は、電顕免疫組織化学的手法と電顕連続切片法を応用した三次元電顕免疫組織化学的手法を用いて血管新生制御の検討を行ってきた。そして、新生血管内皮細胞と周細胞との間の細胞質突起相互陥入(Endothe11al cell andPericyte Interdigitaion(EPI))が、血管新生制御機構に深く関係することを示唆してきた。本研究では、高い血管新生度を示すことが知られている膀胱癌に着目して、実験モデルとしてBBN誘発ラット膀胱癌を作成し三次元電顕免疫組織化学的に検討した。本研究では、近年同定された極めて強い血管内皮細胞増生作用を示すVascularEndothelial Growth Facotor(VEGF)に着目して検討した。 本研究では、ラット膀胱の移行上皮癌細胞においてVEGFの発現を電顕免疫組織化学的に初めて確認することができた。さらに、VEGF陽性癌細胞の近傍に分布する新生毛細血管では、毛細血管内皮細胞は有窓化を示す傾向が強く認められた。さらに、VEGE陽性癌細胞の近傍に分布する新生毛細血管では、周細胞の血管内皮細胞への被覆率が、有意に減少していた。これらのことから、VEGFのpathwayに血管内皮細胞の有窓化と、周細胞と血管内皮細胞の接触性の低下が関与することが考えられた。
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