癌を含め腫瘍に於いて、血管新生なくして腫瘍の進展、増大は認められない。すなわち、血管新生を人為的に制御することができれば、癌を含めた多くの腫瘍の脅威から生物を解放することができる。本研究者は、電顕免疫組織化学的手法と電顕連続切片法を応用した三次元電顕免疫組織化学的手法を用いて血管新生制御の検討を行ってきた。そして、新生血管内皮細胞と周細胞との間の細胞質突起相互陥入(Endothelial cell and Pericyte Interdigitaion(EPI))が、血管新生制御機構に深く関係することを示唆してきた。本研究では、高い血管新生度を示すことが知られている膀胱癌と前立腺癌を対象とした。実験モデルは、BBN誘発ラット膀胱癌とDMBA誘発ラット前立腺癌とし、強い血管新生因子のVascular Endothelial Growth Facotor(VEGF)について三次元電顕免疫組織化学的に検討した。膀胱癌細胞で特異的なVEGFmRNAの発現を、初めてISH法と三次元電顕免疫組織化学的で確認した。VEGFmRNAの発現とVEGF蛋白質の発現分布様式から、VEGFのTurn overがかなり早いことが示唆された。さらに、VEGF陽性癌細胞の近傍に分布する新生毛細血管では、毛細血管内皮細胞は有窓化していた。しかし、少数のEPIしか認められなかった。次に、F(ab′)分画に調整したVEGF中和抗体を膀胱癌に添加した。添加10分後、有窓化血管内皮細胞の数は有意に減少した。さらに、EPIの出現数が有意に増加を示した。しかし、これらの変化は、添加30分後には添加前の状態に戻った。血管新生の阻害とEPIの出現の間に正の相関関係が認められ、EPIが血管新生阻害に関与することの新たなる傍証を加えることができた。
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