Taylorella equigenitalisは、交配によって伝播する生殖器感染症の1つである、ウマ伝染性子宮炎の原因菌として1977年にイギリスで初めてその発生が確認された。その後ヨーロッパ各国、北米、ブラジル、オーストラリアなど、世界の主要馬産国での発生が報告された。我が国日本では、北海道日高地方の軽種馬の間での本疾患の流行が1980年にはじめて確認された。T.equigenitalisは特に競走馬サラブレッドでの発生伝播が顕著で注目されているが、本生物種の血清学的あるいは生物学的タイピング等に関する報告は従来なく、それ故に適切な手法によるタイピング法の確立が本疾患及び本菌の発生と伝播の機構を科学的に解明する上で急務とされていた。 そこで本研究では日本をはじめ世界各国でウマ伝染性子宮炎のウマ及び感染雄ウマより分離された、T.equigenitalis分離株を用いて、アガロースブロック法によりゲノムDNAの調製を行った後に、ApaI及びNotIとパルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)法を用いた手法で研究を行った。T.equigenitalisはアメリカ、アイルランド、イギリス、オーストラリア、ノルウェーそして日本各国の分離株を用い、ゲノムDNA制限酵素断片長多型の結果に基づいてこれら百数十株のジェノタイピングを行った。それらの結果についてはすでに研究発表の項で示した様に原著論文5編の形で公表した。すでに合計百数十株より十数のジェノタイプが同定され、Kentucky188ジェノタイプが世界に広く伝播していること、日本のジェノタイプJがイギリスニューマケット地方に由来すること等が明らかとなった。
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