ウシ主要組織適合性遺伝子複合体(MHC)(BoLA)クラスII遺伝子の中で最も多型に富み機能的な蛋白質をコードするBoLA-DRB3と、ウシ白血病ウイルス(BLV)による白血病発症との相関について解析した。BLV感染牛のゲノムDNAから、PCRにより増幅したDRB3の第2エクソン267塩基対の塩基配列を決定し予測されるアミノ酸配列を比較した。β^<78>残基がTyrのホモ接合を有する個体の頻度は、白血病発症牛とPL牛に比較して、未発症牛では有意に低かった。一方、ValとTyrのヘテロ接合とValとValのホモ接合を有する個体の頻度は、未発症牛に対して白血病発症牛、PL牛では低かった。このVal-β^<78>アリルは全て、β^<71>残基はLys/Argの正荷電のアミノ酸、β^<74>残基はGln/Asnの負あるいは非荷電のアミノ酸であった。以上から、Lys/Arg-β^<71>、Gln/Asn-β^<78>、Val-β^<78>のアミノ酸配列を有するアリルが、BLVによる白血病に対して抵抗性である可能性が示唆された。 次に、以上の仮説をBLVの実験感染動物ヒツジを用いて検証した。ヒツジにBLVを接種後、白血病発症(15頭)および健康(12頭)に大別し、BoLA-DRB3に相当するOLA-DRB1遺伝子の第2エクソンの塩基配列を決定後、予測されるアミノ酸配列を比較した。その結果、β^<70-71>残基がArg-Lys(RK)であるアリルが、白血病発症に対して抵抗性である可能性がでてきた。次に、OLA-DRB1の遺伝子型がRKのヘテロ接合体(RK/X)、およびX/X(Xは任意のアミノ酸残基)の個体に、BLVエンベロープに特異的なエピトープのmix peptideを、3回免疫後BLVで攻撃接種し免疫応答とBLVの病態の進行について観察した。BLVによる白血病に対して抵抗性と予測されたRK/Xの遺伝子型を有するヒツジは、BLVに対する高い中和抗体価と著しいウイルス増殖抑制が観察され、最終的に白血病を誘発しなかった。一方、X/Xの遺伝子型を保有する個体では、peptideで免疫後中和抗体の上昇は認められず、BLV攻撃接種後に急激なウイルス力価の上昇が観察され、2年後にリンパ肉腫に進行した。
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