研究概要 |
黒毛和種の長期不受胎牛における受胎障害防除のためのプログラム立案を目的に,放牧牛において、生菌剤(PROTOCOL)投与と放牧経験の有無がBCS,脂質代謝および肝機能に及ぼす影響,および受胎性に及ぼす影響を検討した. 供試牛(n=23)を生菌剤投与-放牧経験牛群(n=10),生菌剤投与-初放牧牛群(n=8),生菌剤非投与-放牧経験牛群(n=4)および生菌剤非投与-初放牧牛(n=1)に分類した.供試牛全頭から入牧前12日に採血を行い,生菌剤投与群には入牧前12日から入牧日まで連日生菌剤を1頭当たり20g経口投与した.また,入牧後0,7,14,21,31,59,94,および退牧日である122日に血液生化学的検査のために採血を実施し,生菌剤投与群には122日を除く採血日に209の生菌剤を経口投与した.また,各群における受胎の有無を超音波画像診断装置を用いて,経時的に調べた. その結果,生菌剤投与および非投与の両初放牧牛群については、NEFAが入牧後14日まで著しい高値を示した.生菌剤投与および非投与の両生菌剤投与群については放牧期間中ASTが退牧日まで低値で推移した.生菌剤投与-放牧経験牛群については,BCSの安定した推移がみられ,アルブミン値が入牧59日までに正常値に回復した.また,他の3群が入牧94日以降BUNが高値を示したのに対し,試験期間中正常値を示した. また,各群における受胎の有無を超音波画像診断装置を用いて,経時的に調べたところ,受胎率には有意な差は認められなかった. 以上のことから,放牧牛は入牧21日まで飢餓性脂肪肝に伴う脂質代謝能の低下が示峻されたが,それ以降は改善がみられた.また,放牧経験牛は放牧初期の負のエネルギー状態が軽度であった.さらに生菌剤投与群は非投与群と比較して早期の肝機能回復が示峻された.しかし,生菌剤投与の有無によっても,受胎性に差が生じなかったことから,今後投与方法や投与量について更に検討する必要があるものと想われた.
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