南西諸島に生息するアマオブネガイ科腹足類を対象に耐熱性溶血毒(TDH)産生性腸炎ビブリオの分布調査を行った。イシマキガイは屋久島の永田川、カノコガイは沖縄本島の辺野喜川、大保川、満名川、大浦川、汀間川、億首川、屋久島の永田川、イガカノコは沖縄本島の大川川と大浦川、マルアマオブネは西表島のクイラ川と浦内川、アラスジアマガイは西表島のクイラ川、フネアマガイは沖縄本島の大川川、ドングリカノコは沖縄本島の大浦川と西表島の浦内川で採集した。奄美大島、宮古島、石垣島の河川でもアマオブネガイ科腹足類の生息は確認したが、汽水域が短い河川や腹足類の生息数が少ない河川が多く、TDH産生菌の分布しうる汽水域の環境条件を満たしていないと判断し、腹足類は採集しなかった。これとは別に、四国地方で愛媛県を中心に1997年8月に腸炎ビブリオ食中毒が多発したとの情報を得たことから、四国地方西部の河川でもアマオブネガイ科腹足類を採集した。この内、愛媛県の僧都川、中山川、加茂川ではイシマキガイ、愛媛県の僧都川と高知県の国分川ではカノコガイを採集した。採集した貝は実験室に持ち帰り、消化管を摘出して乳剤にし、アルカリペプトン水を用いた最確数法で増菌した後、増殖陽性管について tdh遺伝子を検出するためのPCR法を行った。PCR産物のアガロースゲル電気泳動でPCR産物のバンドが見られた検体からTDH産生性腸炎ビブリオの分離を試みた。その結果、南西諸島の検体からはTDH産生菌は検出されなかった。これに対して、愛媛県の僧都川のカノコガイから 19/g、僧都川のイシマキガイから 4.6/g、加茂川のイシマキガイから 600/gのTDH産生菌を検出した。
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