研究概要 |
urethane(UR)1000mg/kgをヒトプロト型c-Ha-ras癌遺伝子導入トランスジェニック(Tg)マウスおよび同腹仔の非遺伝子導入(Non-Tg)マウスに1回腹腔内投与し,20週目に生存動物全例を屠殺して誘発された腫瘍について導入遺伝子および内在性K-ras遺伝子変異の有無を検討した.UR投与によりTgマウスでは全ての動物に腺腫(発現個数約11個)が認められ,Non-Tgマウスでは雄で1/5例(0.2個),雌で2/4例(1.3個)と低い値を示した.導入遺伝子の変異がTgマウスの雄で100%,雌で50%に認められたが,内在性のK-ras遺伝子に変異は認められなかった.一方,Non-Tgマウスでは雌の肺腫瘍でK-rasの変異が67%に認められた.従来のマウスを用いたUR誘発肺発がん実験では,K-ras遺伝子の変異が肺腫瘍誘発に関与していると報告されているが,今回の実験成績から,肺発がんに導入遺伝子あるいは内在性K-ras遺伝子が必ずしも関与していないことが示唆された. N-Ethyl-N-nitrosourea(ENU)をp53癌遺伝子の片側アレルをノックアウトしたp53(+/-)CBA/OYCマウス(p53-KOマウス)および同腹仔のワイルドp53(+/+)CBA/OYCマウス(CBAマウス)に120mg/kgを1回腹腔内投与し,26週目に生存動物全例を剖検した.腫瘍はp53-KOマウスの子宮に好発し,その形態は子宮腺の異型増殖を伴う子宮内膜肉腫を特徴とするものであった.その発生頻度はCBAマウス(20%)に対して90%と著明に増加した.肺腺腫は両群に好発し(70-80%)し,両群間に差はなかった.リンパ腫はP53-KOマウスでは35%に発現したが,CBAマウスでは5%であった.p53-KOマウスの子宮腫瘍の一部についてp53遺伝子の変異を検索した結果,コドン135,エクソン5(GCG-GTG)に点突然変異が100%認められ,子宮腫瘍の誘発にp53の点突然変異が関与している可能性が示唆された.
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