研究概要 |
植物が乾燥ストレスを回避するために有用な形質および反応に着目し、それらを遺伝子資源とした乾燥耐性の新植物を開発するための基礎的資料を得ることを目的として,深播き耐性を有することで知られている中国在来品種のHong Mang Mai(紅芒麦)を含む14品種を供試して、深播きおよびエチレンによる節間伸長可塑性の品種間差異と、深播き耐性とエチレン反応性の関係を解析した。深播き耐性の強い紅芒麦の節間伸長は、気中においてもエチレン処理(1ppm)によって著しく促進された。タクネコムギを除いた品種の深播きされた時の第一節間伸長とエチレンによる伸長の程度にはr=0.676の有為な相関が認められた。すなわち、深播き条件下で第一節間が伸長する品種はエチレンによる節間伸長も大きい傾向にあった。しかし、北海道で栽培されるタクネコムギ(図中で黒丸塗りで示している)は、例外的な反応を示すことがわかった。つまり、タクネコムギの第一節間の伸長は、エチレン処理によって著しく促進され、紅芒麦以上の伸長を示したにもかかわらず、深播き条件における第一節間の伸長程度は他の普通品種のものと差がないか、むしろ小さいことがわかった。コムギの節間伸長におけるエチレン受容体遺伝子の関与を明らかにするために、紅芒麦のエチレン受容体遺伝子の部分的cDNAを単離した。その結果、紅芒麦と他の日本品種の間には、顕著な発現量に変化はみられず、また1ppmのエチレン存在下でも今回単離をしたコムギエチレン受容体遺伝子ERSの発現量の上昇は認められなかった。
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