禾本科植物の環境適応機構を芽生えの形態形成および、それを仲立ちする制御機構から明らかにするため多数のイネ科植物を用いて、種子を深播きした時にどの器官が適応的に伸長してその環境変化に対応するかを調べ、環境適応の系統発生的な進化の動態を知るため試験を行った。単子葉植物のコムギでは深播きされた時の第一節間の伸長には著しい品種間差があり、乾燥地に適応している品種の中にはこの能力が極めて大きいものがある。これは陸上植物の縦方向の伸長がエチレンにより促進されることを、器官の環境に適応して示される可塑性と関連して見出した最初のものである。一方、二酸化炭素はこのエチレンの作用に拮抗した。陸上植物でエチレンが縦方向の生長を促進する例はあまり知られておらず、特に環境適応との関連で伸長促進がはっきりと示されたのはこれが最初である。また、深播き耐性の強い紅芒麦と普通品種の間で交雑を行い、雑種第2代の第一節間長に対する深播きとエチレンの作用を検討した。その結果、深播きおよびエチレンに対する第一節間の反応性には複数の遺伝子が関与するものの、両者の遺伝力は著しく高い値を示し、これらの性質を利用した選抜・育種が可能であることが示された。現在、この点に関して引き続き、他の雑種第2代種子を用いて検討している。
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