所定量のセルロースジアセテート(CDA)、乳酸、グリコール酸、ジフェニルエーテル(溶媒)及びスズ(触媒)を500ml容四つ口フラスコに秤量し、真空ポンプ、撹拌装置、水分定量受器及びジムロード冷却管を接続し、140℃、45〜55mmHgの条件下で、まず系内の水を除去した。引き続いて、水分定量受器をモレキュラーシ-ブ3Aを充填したソックスレ-抽出管に付け替え、エステル化反応で生成した水が溶媒と共沸してモレキュラーシ-ブにより取り除かれ、溶媒のみが環流によりフラスコ内に戻るシステムでCDAのフリー水酸基へのグラフト化を進めた。乳酸、及びグリコール酸は水溶液の形で安価に市販されているが、CDAへのグラフト化反応における水溶液中の水分量の影響の検討も行った。なお、水分量の測定にはカ-ルフィッシャー水分計を用いた。結果として、1〜4時間という決して長くない反応時間においても、CDAは明らかに可塑化され、フローテスターの測定による未処理CDAの熱流動温度が255℃であったものが、220℃〜140℃にまで低下し、可撓性の高い材料が得られた。グラフトされたCDAをアルカリ加水分解し、結合乳酸、及び結合グリコール酸を定量した結果、反応時間が長いほど、また、触媒量が多いほどそれらの量は増加すること、また、当モルで仕込んだにもかかわらず、その量はグリコール酸の方が乳酸の量の約1.3倍であった。生成物を熱圧成形し得られたシートの引張特性は、引張強度約30〜80MPa、破壊伸び1.6〜7.6%、ヤング率1100〜2100MPaと、ポリスチレンの約2倍の強度をもつ非常にタフで強い材料となり得ることが知られた。シートの生分解試験は現在進行中であるが、たとえば1カ月のコンポスト試験により重量減少率が50%にも達するなど、反応条件によっては非常に高い生分解性を有するものを調製し得ることが知られつつある。
|