ヒドロキシ酸のグラフトによるセルロースジアセテート(CDA)のプラスチック材料化の試みとして、ε-カプロラクトン(CL)と乳酸(LA)、及び、グリコール酸(GA)とLAをそれぞれグラフト共重合モノマーとした検討を行った。その結果、どちらの共重合モノマー系を用いてもCDAは効果的に可塑化された。前者の系においては、CDAの可塑化が導入される2つのモノマー配列により影響されること、この反応系ではLAに比べてCLの反応性がより高いこと、LAを多く導入すると堅くて脆い材料に、CLを多く導入するとエラストマー的な材料に、また、両者ともブロック共重合性が高い状態で導入されると、導入側鎖の凝集、結晶化の影響が大きく出ることなど有意な知見を得た。後者の系を用いた場合、LAに対するGAの仕込み比率を高くすることでグラフト側鎖の導入量が増大し、生成物の熱圧成形シートの物性も向上した。示差走査熱量測定により、GA比が多くなるほどグラフト鎖由来の転移が明瞭になることからより多くの側鎖がCDAに結合し、そして凝集していることが知られた。また、CDA由来の二次転移がGA比が大きくなるほど低温側にシフトし、熱可塑性の向上が明らかにされた。さらに、グラフト物と、生分解性高分子である脂肪族ポリカーボネートとのブレンドに関し有用な知見を得た。生成物の生分解性試験において、コンポスト処理を行った結果、1ヶ月で60%以上の重量減少、分子量の大幅な低下が認められ、グラフト側鎖の脱離だけではなく、脱アセチルやセルロース主鎖の切断も起こっていることが明らかとなった。デンプンのプラスチック材料化の検討では、酢酸ビニルを酢化剤としてアセチル化デンプンを調製した後、そのフリーの水酸基にCL及びラクチドを用いた開環グラフト重合を行いデンプンの低分子化を押さえつつ、良好な熱可塑性を備えたデンプンプラスチックを得た。
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