1.使用ずみ家畜敷料の好気醗酵処理のモニタリング 肉牛飼育から得られた木材を含む使用ずみ敷料を、1m×1m×1mの実験用木枠に堆積し、好気醗酵させた。発熱の終了までの気温および堆積物中の3箇所の温度分布を連続的にデータロガー付温度計で記録し、収集したデータをパソコンにより集積記録した上、解析した。通常のツクリタケ栽培において使用するイナワラを主体とする合成堆肥と比較すると、肉眼的に観察される菌類種は少なく、体積、状態など外観的な変化が明瞭でなかった。したがって、外気の影響を受けにくい中心温度の測定により切り返しの時期を迅速に把握し、効率的な醗酵処理を行うこと、さらに担子菌の接種に必要な醗酵の段階を簡易に把持することは、非常に有効であると考えられた。 2.担子菌の増殖適正試験 ツクリタケ(Agaricus bisporus)を含む腐生的な担子菌を、醗酵処理使用ずみ敷料に接種し、殺菌条件と無殺菌条件(醗酵)での増殖能を調査した。ツクリタケの増殖は良好であり、肉牛飼育から得られた木材を含む使用ずみ敷料が、通常のツクリタケ栽培において使用するイナワラを主体とする合成堆肥にかわりうる、有望な培地となることが考えられた。また、コムラサキシメジ(Lepista sordida)など土壌中の有機物の分解に関わっている担子菌の数種は、殺菌条件だけでなく無殺菌条件でも良好な増殖を示し、これらの菌類の栽培培地としても広く利用可能なことが示された。ただし、増殖状態には、反復実験間で差が見られ、接種時の醗酵状態において、さらに微細な要因が存在していると考えられ、さらに検討が必要である。
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