レポーター遺伝子(アリルスルファターゼ遺伝子)の構造遺伝子に炭酸脱水酵素遺伝子CAHlの5'上流域を連結して緑藻クラミドモナスに形質転換を行ったところ、CO_2濃度変化に応答したレポーター遺伝子の発現が認められた。この遺伝子発現制御には遺伝子の転写開始点から651塩基までの上流域があれば十分であることが判明した。 クラミドモナスから、高CO_2要求株(培養中のCO_2濃度が空気レベルの0.04%に低下すると生育速度が低下する株)を遺伝子タギング法により単離した。得られた変異株では、無機炭素濃縮機構を担うタンパク質をコートする遺伝子や、CO_2濃度の低下を細胞が感知してから無機炭素濃縮機構の発現誘導が引き起こされるまでの、シグナル伝達系路に関与する遺伝子が変異していると考えられた。得られた6株の変異株の中には、光合成の無機炭素に対する親和性が低下した株(K_<1/2(Ci)>値が低CO_2条件でも高CO_2条件と変化ない株)や、CAHl遺伝子に変異はないのに、その発現が低CO_2条件で全く誘導されない株(C16株)も得られた。 C16株では、野生株内在性のNIT1のシグナルとは別に、新たに挿入されたNIT1由来のシグナルが検出された。NIT1をプローブとして得られた原因遺伝子の部分塩基配列を決定した。この配列をデータベースに対して相同性検索を行ったが、有意な相同性を示す既知配列はなかったので、これまでには報告のない新規な遺伝子をコードしている可能性が示唆された。
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