マウスの下垂体前葉細胞におけるミオシンの局在を蛍光抗体法で調べたところ、前葉細胞の周辺部に比較的局在していた。さらに免疫電顕法によって詳細に調べると、細胞膜と一部の分泌果粒膜に近接してミオシンが局在していることがわかった。分泌果粒にF-アクチンが結合することは既に明らかにしたので、分泌果粒の運動にアクト-ミオシン系が関与している可能性が示された。次に、ミオシンの機能を制御するミオシン軽鎖キナーゼの局在を免疫電顕法で調べたところ、分泌果粒膜に近接してミオシン軽鎖キナーゼが局在していることがわかった。膜癒合を促進する作用のあるアネキシンIIの下垂体前葉における局在を免疫電顕法で調べたところ、細胞膜の内側と分泌果粒膜の外側に検出された。特に、細胞膜と分泌果粒の接近点と果粒どうしの接近点にアネキシンIIが濃縮していた。この部位を急速凍結エッチングレプリカ法で観察すると、細胞膜と果粒および果粒と果粒をつなぐごく短い(10nm以下)架橋構造が見られた。この構造がアネキシンIIである可能性がある。ウェルシュ菌エンテロトキシンを用いて下垂体前葉細胞にCa^<2+>を強制導入すると、multigranular exocytosisが起こるが、これを急速凍結エッチングレプリカ法で見ると、果粒間にあった架橋構造は消失し、膜癒合が起こっていた。アネキシンIIはエキソサイトーシスにおける果粒と細胞膜の癒合のみならず、細胞内の膜癒合現象に広く関与している可能性が考えられる。一方、インスリノーマ由来のMin6細胞におけるミオシン軽鎖キナーゼの分布を蛍光抗体法で調べると、非分泌刺激時は細胞質全体に分布したが、分泌刺激によって細胞周辺部に濃縮した。さらに、免疫電顕法で調べたところ、一部の分泌果粒膜に近接してミオシン軽鎖キナーゼが局在していることがわかった。Min6細胞における分泌果粒の輸送にもミオシン軽鎖キナーゼが調節因子として関与していると思われる。
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