1.マウスの下垂体前葉細胞の分泌顆粒には、heavy meromyosinで修飾されるF-アクチンが結合していた。F-アクチンの顆粒への結合様式には2通りあり、F-アクチンの一端が直接分泌顆粒膜に結合する場合と、F-アクチンと分泌顆粒が短い架橋によってside-to-sideに結合する場合とがあった。免疫電顕法で、分泌顆粒の近傍にアクチンとミオシンの共存が認められた。さらに、アクト・ミオシイ系を制御するミオシン軽鎖キナーゼが分泌顆粒膜に接して局在した。よって、分泌顆粒の細胞内運動にアクト・ミオシン系が関与していることが示唆された。 2.膜癒合を促進する作用のあるアネキシンIIが、細胞膜と分泌顆粒膜の接触点および顆粒膜どうしの接触点に局在していた。この部位を凍結レプリカ電顕法で観察すると、近接する膜の間に短い(10nm以下)架橋構造が見られた。ウェルシュ菌毒素によってCa^<2+>-influxをおこすと、この構造は消失し、膜癒合がおこった。アネキシンIIがこれらの架橋構造を構成し、膜癒合に深く関わっている可能性がある。 3.MIN6細胞(膵B細胞由来インスリン分泌細胞株)内のインスリン顆粒の運動は、アクチン重合阻害剤であるmycalolide Bによって亢進した。その際、インスリン顆粒は細胞周辺部にシフトした。また、mycalolide Bによってインスリンの分泌量は一過性に増加した。種々の分泌刺激条件下でのインスリン分泌もmycalolide Bによって増加した。これらの結果から、F-アクチンがインスリン顆粒の細胞内局在部位に大きな影響を与えることと、F-アクチンの破壊がインスリン分泌に促進的に働くことが示唆された。
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