研究概要 |
細胞内へあるいは細胞内から外へのイオンや糖などの物質の移動は、細胞膜に存在するイオンポンプ、チャネルやトランスポーターによって受動的あるいは能動的に行われている。通常、こららのポンプやチャネルは恒常的に細胞膜に存在し、ホルモンなどのリガンド刺激によって、活性化され、ポンプによって細胞内からイオンがくみ出されたり、チャネルが開き、イオンが通過できるようになる。本研究ではこれらチャネルとリガンド刺激の相関関係,換言すれば,チャネルとレセプターの関係を形態学的に検討することを目的としている.最近,私たちは凍結割断レプリカを用いて細胞化学的標識を行う方法(SDS処理凍結割断レプリカ標識法SDS-digested freeze-fracture replica labeling,以下SDS-FRLと略す)を考案し,これによって,レプリカ上で生体分子の同定や分布状態を解析することが可能になった.本年度は,まずは細胞膜上におけるチャンネルの分布状態を解析する目的で,水チャンネルの一つであるアクアポリン4(aquaporin4,AQ4)のアストロサイトにおける局在をSDS-FRLによって電子顕微鏡的に検討した. レプリカ免疫電顕法によって,AQ4の免疫局在がアストロサイトの細胞膜に特徴的な膜内粒子の配列構造「orthogonal arrays of particles, OAPs」に一致することを見いだした.OAPs構造は古くから,アストロサイトの細胞膜の特徴とされていたが,現在までのところ,その構成分子は不明であったが,今回の我々の観察から,AQP4はOAPs構造の一構成分子である可能性が強く示唆された.今後は,このAQP4を調整しうるレセプター分子を検索し,両者の関係を明らかにする.
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