消化管の粘液分泌細胞においてはO-グリコシド型糖タンパクが活発に合成され、その糖付加はゴルジ装置で行われるので、レクチン細胞組織化学によりゴルジ装置と分泌顆粒を特異的に染色することができる。さらにゴルジ層板が厚く積み重なっている場合には、シス側層板、中間層、トランス側層板で付加される糖残基が異なることに基づいて、各層板の染め分けが可能である。そこで、レクチン染色を行なってコンフォーカルレーザー走査顕微鏡で観察し、光学的断層像を立体構築することにより、コルジ装置が「細胞とうい3次元空間」の中でどのような広がりをもって存在しているかを明らかにすることを試みた。 マウス十二指腸のブルンナー腺細胞においては、ゴルジ装置は核上部にドーム型に広がっている。ドーム壁の最外層はレース状のシス側層板で構成され、その内側に同じ様なレース状の中間層板が配置し、さらにその内側に敷石状のトランス側層板が配列している。分泌顆粒はドーム構造の内部空間に向かって形成・放出された後、層板の網目を通過して細胞頂部に輸送される。 マウス遠位結腸の杯細胞では、タンパクに直接結合するリンカー糖に特異的なレクチンを用いると、腸陰窩下部の杯細胞のゴルジ層板は強く染色されるが、陰窩上部や粘膜表面の細胞では比較的弱く染色される。このことから腸陰窩下部の杯細胞の方が、糖タンパク合成が活発であることが示唆される。この部ではゴルジ装置はブルンナー腺細胞とよく似た3次元構造をもつが、分泌顆粒の通過するドームの孔はより大きい。腸陰窩上部の杯細胞のゴルジ装置では、おそらく集積した分泌顆粒に押し拡げられて、この孔がより大きくなり、一般に言われている杯型のゴルジ装置になると推測される。
|