研究概要 |
1. 白血球を外来性ないし内因性DNaseおよびプロテナーゼK(0.02unit/ml)との組み合わせによる最適な分別処理をした後に、ヒトX染色体に特異的な標識DNA(Xp21,Xq13,Xq21)プローブでDNA in situ hybridization法を施行した。これにより活性X染色体は核の正染色質に分布し不活性X染色体は異染色質に分布して識別できた。 2. ラット下垂体前葉GH3培養細胞およびラット下垂体前葉組織切片において遺伝子DNAに結合できる蛋白を局在する方法であるSouthwestern histochemistry(SWH)法を施行した。その結果、成長ホルモン(GH)細胞ではGH遺伝子の促進性転写調節因子Pit-1が核内に分布するが抑制性転写調節因子PREBは核内に分布せず、プロラクチン(PRL)細胞ではPRL遺伝子の促進性転写調節因子でもあるPit-1とPREBいずれもが核内に分布していた。 3. ラット腹腔内にGH放出ホルモンあるいはソマトスタチンをそれぞれ10nM投与した4時間後の下垂体前葉組織切片のPit-1とPREBのSWHによる核内分布と染色強度は、対照と顕著な差は認められなかった。Pit-1を中和した後にGH3細胞においてGH遺伝子の転写が阻害されるか否かは、まだ確認できない。 4. ラット胎盤では妊娠14日頃から一部の同様な栄養膜細胞にPit-1が核にPRLが細胞質に分布し始めた。妊娠日令が進むに伴い、いずれもそれらの陽性栄養膜細胞の数と染色性が増加した。しかし19日頃には免疫組織化学法では栄養膜細胞の細胞質にもPit-1が分布しPRLの染色性は減少した。ラット胎盤の細胞でPit-1が核内に分布することが、PRL様物質を産生する栄養膜細胞に機能的に分化することと関連があることが示唆された。
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