前年度(平成9年)に引き続き、微小循環系、とくに毛細リンパ管網の微細分布の臓器特異性を基礎に、リンパ管の組織化学的研究をおこない、以下の結果を得た。 1) 正常および病理組織における微小脈管(リンパ管・血管)の確定のための酵素組織化学法と免疫組織化学法の適用の可能性(対比) 酵素組織化学法:、腸管壁について、粘膜層や筋層を注意深く剥離し、薄層の伸展試料を5′-Naseとacetylecholine esteraseの二重染色し、リンパ管と神経の光顕像とSEM反射電子像(硝酸銀処理)を観察し、両者の分布状況をさらに明らかにした。 免疫組織化学法:基底膜構成物質であるIV型コラーゲンやラミニンに対する抗体を用いて、これらの免疫染色により、血管も染別・同定した。また、nitric oxide synthesis(eNOS)の分布も調べた。最近入手し得た抗ヒト胸管抗体を、ヒト胆嚢及び歯髄などの組織を用いて検討(免疫染色)し、特異性を調べたが、本抗体に関しては必ずしも一定の特異的な結果は得られていず、さらに詳細な検討が必要であるものと考えられる。尚、引き続き上記両方法を併用した効果的な観察法について、両試料(切片・伸展)ともに検索中である。 2) リンパ管の再生・新生実験 1) ラットの下腿部のリンパ管を切断、あるいは腹部胸管を結紮・切断し、一定期間後(1〜2週目)の再生時に局部の両脈管の増殖・新生状況を調べた。特に新生リンパ管の5′-Nase酵素活性は対照群のそれらと比較して高かった。 2) 腸間膜の酵素染色・免疫染色による両脈管の内皮細胞の増殖(出芽)の検索や培養リンパ管内皮細胞の細胞化学的検索は現在もなお進行・検討中で明確な結果を得ていない。
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