研究概要 |
1, 免疫組織化学的検討:3ヶ月間低酸素暴露(10%O_2,3-4%CO_2)され血管拡張を伴い肥大したラット頚動脈小体では、SPとCGRP線維の分布密度は減少、VIPは増加、NPYは不変であった。これらの神経ペプチドは血管作動性であることから、低酸素環境下では、特にVIPの血流調節により間接的に化学受容機構に関与していることが推測された。一方、NOS陽性線維は減少したが、NOは正常環境下では化学受容機構に抑制的に働いていることが知られているので、NO産生の減少によるdisinhibitionが起こっていることが予測された。 2. 共焦点レーザー顕微鏡による三次元的解析:数十枚の光学的切片を立体構築することにより、上記ペプチド性神経は主として血管周囲に密に分布することがいっそう明らかになった。 3. 細胞内セカンドメッセンジャー投与による生理学的検討:慢性低酸素状況下における自律神経系の調和の乱れに基づく伝達物質によるリセプターの慢性的刺激により、軸索輸送の持続的促進による伝達物質輸送の増加、軸索輸送の増加に伴う新たな神経突起の伸展、神経細胞体内での伝達物質の合成促進等が推測された。さらに、培養細胞系でも検討を進めている。 4. 化学受容細胞内のカルシウム測定:低酸素刺激により細胞内カルシウムが増加する細胞としない細胞が見られた。生理学的意義について検討中である。 5. 比較形態学的検討:酸素要求量の低い下等脊椎動物の頚動脈小体でもペプチド性神経線維は血管周囲に多く見られ、ラット頚動脈小体で得られた結論を指示するものであった。
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