研究概要 |
血管新生の過程は,1.内皮細胞の活性化 2.基底膜,細胞外マトリックスの分解 3.内皮細胞の遊走 4.内皮細胞の分裂と増殖 5.内皮細胞の分化による管腔形成の各ステップをふむとされている.これら一連の過程において,種々の制御因子が相互作用しながら,血管新生は調節されている.血管新生を調節する因子の一つとしてintegrinが関与しており,本年度は,collagen gelを用いた培養下で大動脈と骨格筋explantからの血管新生の過程とintegrinの発現について調べた. 成熟Wistarラットより,胸大動脈,腓腹筋,ヒラメ筋を摘出し,組織片とした.3-5mmに細切した各組織片を,plastic dishの底面におき,その上にcollagen gelを重層し,Ham F-12培地に20%ウシ胎仔血清を含む培養液で2週間培養を行った.integrin(α1,α3,α6,αV)の各抗体で反応後,蛍光顕微鏡ならびに電子顕微鏡的に観察を行った. 培養2-3日目から組織片の断端からfibroblastic cellの遊走がみられ,その後毛細血管様tubeの形成が認められた.腓腹筋に比較してヒラメ筋の方が組織片から遊走するfibroblastic cellは豊富で、毛細血管様チューブの形成も明瞭であった。この差は、白筋と赤筋における毛細血管の分布密度の差によると思われた.毛細血管様tubeの形成に先立ってfibroblastic cellが遊走してくるが,とくにその先頭部分の細胞にはα1が強く発現していた.培養日数が進むにつれ,α3,αVを強く発現する細胞が認められ,α3では索状に配列した細胞にも反応が認められ,毛細血管様tubeの形成にはα3,αVが関係すると思われた.
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