研究概要 |
血管新生には,種々の制御因子が作用している.collagen gelを用いた培養下で大動脈片からの血管新生を調べた結果,血管新生に先立って大動脈片からのfibroblastic cellの遊走が重要な役割をはたしていることが分かった.血管新生を調節する因子である増殖因子ならびに接着分子であるintegrinについて調べた. 結果,増殖因子ではPDGF,bFGFがfibroblastic cellの遊走を促進した.integrinについては,遊走した細胞,特にその先頭部分の細胞群にはα1とα2が強く発現していた.大動脈片のより近傍,毛細血管様tubeが形成される領域にはα3,αvを強く発現する細胞が認められ,これらが毛細血管様tubeの形成に関係するものと思われた.さらに,integrinと細胞外基質,特にfibronectinの結合部位とされるRDG配列を含むポリペプチドの影響について調べたところ,RDG配列を含むポリペプチドにはfibroblastic cellの遊走に対する抑制効果は認められなかった.血管新生の機序については,これらの増殖因子とintegrinの発現,細胞外基質の関係について,さらに検討する必要があると思われた. 臨床的応用については,材料として筋組織特に赤筋が主体であるであるヒラメ筋などの方が白筋主体の腓腹筋などよりも遊走するfibroblastic cellは豊富で、毛細血管様チューブの形成も明瞭であることを確認した.さらに,アテロコラーゲン・スポンジによる真皮欠損用グラフト内に組織片を埋め込み,これらの材料でも血管新生が起きることも確認した.
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