研究概要 |
血管新生には,種々の制御因子が作用している.collagen gelを用いた培養下での血管新生を観察し,増殖因子の影響とその遺伝子発現について調べた.さらに真皮欠損用グラフト内に組織片を埋め込み臨床応用の可能性について検討した. 成熟マウスより,胸大動脈ならびに下腿の筋の一部を摘出し,組織片とした.各組織片を,plastic dishの底面におき,その上にcollagen gelを重層し,Ham F-12培地に増殖因子(PDGF,bFGF,VEGF)を含む培養液で2週間培養を行った.また,これらの増殖因子のmRNAの発現をRT-PCRを用いて検討した. 増殖因子では特にPDGF,bFGFが大動脈片からのfibroblastic cellの遊走を促進し,遊走した細胞にはPDGF,bFGFのmRNAの発現がみられた.VEGFは顕著な促進効果はみられなかったがmRNAの発現は認められ,これらの増殖因子がauto-crine,para-crine的に働き毛細血管様tubeが形成されていくものと思われた.臨床的応用については,材料として筋組織特に赤筋が主体であるであるヒラメ筋などの方が白筋主体の腓腹筋などよりも遊走するfibroblastic cellは豊富で、毛細血管様チューブの形成も明瞭であることを確認した.さらに,アテロコラーゲン・スポンジによる真皮欠損用グラフト内に組織片を埋め込み,これらの材料でも血管新生が起きることも確認し臨床応用が可能であるという結論を得た.
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