研究概要 |
マウス胎仔(胎齢15.5日あるいは16日)の小腸を細胞の単位に分散した後、高密度の状態で培養すると器官様構造(organoid)が再形成される。上皮系の細胞は細胞塊の表層を覆う場合と、細胞塊の中層にvesicleを作る場合とがある。これらの間には平滑筋を含む間葉系の細胞が存在する。また、細胞間には細胞外マトリックスが存在する。 細胞外マトリックスは種々のものが報告されているが、この中のひとつである、コラゲン線維について観察し、器官形成におよぼす影響を検討した。 1,免疫染色によるコラゲン線維の確認 : type I-collagenに対する免疫染色で確認すると細胞塊のなかに確認され、コラゲン線維が器官様構造の骨格になっていることが観察された。 2,電子顕微鏡による形態的観察 : 培養2〜3日後で線維状のコラゲンが観察された。 3,コラゲン線維網を観察 : 組織塊から細胞を取り除き、コラゲン線維網のみにして走査電子顕微鏡で観察すると培養6〜7日後ではvesicleを取り囲むように、あるいは細胞塊の辺縁や絨毛様構造の下では上皮の形態に相対する形態をしめし、やや太い束となった線維や、細い線維が確認された。 これからの実験計画 1,コラゲン線維網を各培養経過中の細胞塊について詳細に観察し、方向性や、太さについて解明する。 2,コラゲン合成阻害剤を含む液で培養をして、器官様構造の形成変化をみる。 3,器官様構造の形成後、細胞塊は暫時小さくなるので、このような時のコラゲンの合成・分解・吸収経過を観察する。 4,コラゲンを合成する細胞,あるいは合成を促進する因子と器官様構造の形成にかかわる物質について分子生物学的に解明する。
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