研究概要 |
マウス胎仔の小腸を細胞の単位に分散した後,高密度の状態で培養すると器官様構造(organold)が再形成される.このときのコラゲン線維について観察し,コラゲン線維の器官形成や絨毛形成におよぼす影響を検討した. 1. コラゲン量の測定:細胞塊のコラゲン量をSircol collagen(soluble)assayで測定すると培養1・2日後には培養開始前より少なくなるが暫時多くなり,培養7・8目が最も多くなり,さらに培養を継続すると減少した. 2. コラゲン合成阻害剤の影響:コラゲンの合成を阻害するL-azetidine 2 carboxylic acid(AzC)を培養液に添加して観察すると,通常培養2日後には細胞塊の辺縁の一部に上皮の再形成が起こるが,AzCの添加では器官様構造の形成は認められなかった.培養を継続しても絨毛様構造はみられなかった. 3. コラゲン線維網の観察:細胞塊の断面あるいはNaOH処理(大谷法)によりコラゲン線維網にして観察すると線維状のコラゲンは培養1〜2日後で観察され,培養7〜8日後ではvesicleを取り囲むようにあるいは細胞塊の辺縁や絨毛様構造の下では上皮の形態に相対する形態を示し,やや太い束となった線維や,細い線維が観察された. 4. コラゲンの分解について:MMP-1の存在は確認されたがMMP-1を合成する細胞の同定とコラゲンの分解およびその吸収経過を確認することはできなかった. 5. FGFのmRNAの発現について:コラゲンを合成する細胞は線維芽細胞や平滑筋などが報告されている,今回は,FGFについて分子生物学的に比較すると,FGF-2,FGF-9はどの培養期間にも発現がみれたがFGF-1については培養8日には発現が認められたが培養0日では発現がみられなかった. コラゲン線維は器官あるいは細胞の力学的支持体として重要であるが,器官再形成時にもコラゲン合成なしには器官様構造をつくることはなかった.
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