研究概要 |
免疫組織化学法を用いてラット脳内を検索した結果、神経ペプチドPACAPの含有ニューロンは視床下部の視索上核や室傍核に密に分布し、多数のPACAP性神経終末が神経内分泌細胞にシナプスを形成しているのを免疫電顕的に観察・報告した(Shioda et al.,1997a)。さらにこのペプチドレセプターの脳内分布をin situハイブリダイゼーション法とレセプターに特異的な抗体(Li et al.,1997b)による免疫組織化学法を用いてしらべたところ、このレセプターは視床下部のみならず、嗅球、海馬、小脳など脳内にも広く発現しているのをみとめた(Shioda et al.,1997c)。免疫組織化学法とin situハイブリダイゼーション法の組み合わせ法を用いて視索上核をしらべたところ、バソプレシンニューロンが特異的にこのレセプターを発現しているのが明らかになった(Shioda et al.,1997a)。一方、バソプレシンニューロンはノルアドレナリン性ニューロンの神経支配も受けており、単離した神経内分泌細胞はα-レセプターを介して細胞内の情報伝達を行っていることが明らかになった(Shioda et al.,1997c)。種々の試薬類を用いてこれらアミン・ペプチド性ニューロンによる細胞内シグナル伝達機構をしらべた結果、ノルアドレナリンおよびPACAPはcAMP-プロテインキナーゼAを介して細胞内のカルシウム濃度を上昇させていることが明らかになった(Shioda et al.,1997a,d)。現在、このプロテインキナーゼAがどのタイプのカルシウムチャネルをリン酸化して細胞内のカルシウム濃度を上昇させ、ひいては神経分泌ニューロンの興奮・分泌果粒の放出につながるのかをしらべている。
|