5日から20日目のニワトリ胚大動脈を使って、血管の発達に伴う内皮細胞の形態学的な変化とアクチン細胞骨格の分布変化の分布変化との関係の解明を、蛍光顕微鏡法および電子顕微鏡を使って進めている。これまでの観察によって明らかになったことの一つは、内皮細胞の典型的なアクチン線維の束であるストレスファイバーが、胚発生の8日目頃から急速に形成されることである。そしてこの現象が血管の発達につれて、細胞が血流に沿って細長くなることと強く関連することも同時に明らかとなった。内皮細胞の変形は大動脈の発達による内皮の表面積の増加に貢献すると考えられるが、胚発生の8日目頃を中心とする最大で約2倍というこの細胞の伸長だけでは説明できない。内皮細胞の分裂頻度を検討することにしたが、文献上これまで、脊椎動物胚の血管内皮における細胞分裂の分布はほとんど調べられていなかった。そこで、非放射性物質で複製中のDNAを標識できる物質として知られている、ブロモデオキシウリジンを利用して、発生中の4段階のニワトリ胚大動脈について細胞分裂の頻度と分布を調べた(10日、14日、20日の各胚および孵化後3日目について)。この実験から2つの新しい結果を報告した。一つは、胚の期間だけにおいても、発生段階が早いほど内皮細胞の分裂頻度が高いことである(10日胚で3.8%、20日胚で1.3%)。他の一つは実験方法の改良である。胚の細い血管内に標識物質を直接注入し、その後の免疫蛍光抗体法の処理過程も変えて、血管片の全載標本にも応用できるようにしたため、今後、各種の動物胚を使った同様の研究にも応用できるものとおもわれる。この改良方法によって、短時間で蛍光顕微鏡での広い試料面積の観察が可能となった(論文印刷中)。
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