研究概要 |
ニワトリ胚の大動脈内皮細胞ストレスファイバーが、細胞の伸張とともに形成されることは、これまでの研究でほぼ分かった。しかし、胚における形成初期の様子はまだはっきりしない。そこで、ウシ大動脈由来培養内皮細胞を使って、ストレスファイバーの形成過程を調べた。培養細胞は、器壁に定着すると同時にストレスファイバーが出現するため、形成の初期段階での追跡は困難であった。アクチン線維の阻害剤であるサイトカラシンDを使うことで、ストレスファイバーを完全に壊し、その後の再生過程を蛍光抗体標識法と電子顕微鏡を用いて観察した結果を報告した。1ug/mlのサイトカラシンD存在下1時間で消失したストレスファイバーは、正常な培養液に移して30分経つと細いものが再生する。この再生途中のファイバーにおいては、ミオシンとalpha-アクチニンの分布は正常なものの場合と同様であったが、アクチン線維は、連続的な染色像のほかビーズ状に塊が並ぶ部分もあった。後者の電子顕微鏡像は、筋線維のサルコメアとよく似た規則的な配列をみせており、ストレスファイバーの形成の基本構造である可能性が高い。 また、細胞培養方法について、より生体の組織に近い環境をつくるため、コラーゲン・ゲルを利用した立体培養技術の開発も試みている。今回用いた細胞はマウス由来の腫瘍細胞であるが、転移性、非転移性の両株とも、マウスに移植した場合と同様の細胞形態を培養下で示した(3rd APOCB Congress,1998)。
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