蛍光顕微鏡法と電子顕微鏡法を用いて、ニワトリの胚動脈内皮細胞とウシ大動脈由来培養内皮細胞におけるアクチン線維の分布を研究した。1998年度は、ウシ大動脈由来培養内皮細胞とサイトカラシンDを用いて、ストレスファイバー形成初期の形態を調べた。ストレスファイバーは1μg/mlのサイトカラシンD存在下1時間で消失したが、正常な培養液に移して30分経つと再生が始まった。再生初期のファイバーには、筋線維のサルコメアに似たアクチン線維束がビーズ状に配列する部分があることを明らかにした。 1999年度は、サイトカラシンDを15日目頃のニワトリ胚の尿しょう膜の動脈に注入し、内皮のアクチン線維の分布変化を調べた。胚においてストレスファイバーの分布密度は大きく伸張した細胞ほど高いが、1μg/mlのサイトカラシンDを注入後1時間経ても細胞の形態に大きな変化はなく、基質側で細胞の両端に達するストレイファイバーは残っていた。しかし、このファイバーの分布密度の低下は、6日目以前の胚にみられるような、細胞周辺部でのアクチン線維束の発達を引き起こすことも同時に観察した。 以上の研究結果から、1・ストレスファイバー形成誘導の要因の一つは発生過程での内皮細胞の伸張である。 2・ストレスファイバーの形成と細胞周辺のアクチン線維束の減少は相関関係にあり、このファイバーが細胞接着を補強することを示唆する。 3・ストレスファイバー形成初期に筋線維のサルコメアとよく似た規則的なアクチン線維束の配列がみられ、このファイバーの基本構造である可能性がある。などが明らかになった。 1997年度に、内皮細胞の分裂頻度が若いニワトリ胚ほど高いことを明らかにし、現在その結果を基に、ふ卵12日頃の胚動脈内皮の分裂過程にある細胞についてもストレスファイバーの形成や動態について、調べをすすめている。
|