研究概要 |
低酸素・換気応答を構成する神経回路に発達可塑性が存在するという仮定を設け、以下の研究を行った。仮説:周産期に高酸素暴露により頚動脈小体経由の低酸素刺激を遮断(hyeproxic denervation)すると,成熟後に低酸素・換気応答が強く障害される。 ラットを、周産期(出生2日前から出生後4週間)高酸素暴露した群(70%、n=10)と空気環境下で飼育した群(対照群、n=8)に分割した。9-12週齢の動物を麻酔し、分時換気量V_E、一回換気量V_T、呼吸数fと低酸素換気応答(21、15、10%O_2)を計測した。V_E/100g、V_T/100gやfは両群間に差はなく、また空気吸入下での動脈血炭酸ガス及び酸素分圧にも有意差を認めなかった。低酸素ガス吸入時の換気諸量(VE/100g、f)は高酸素暴露群では対照群に比較して有意に低下していた(P<0.05)。高酸素暴露群では低酸素に対する換気応答性△V_E/100gは、高酸素暴露群では対照群に比べて45%減弱した(P<0.05)。 周産期から発違初期にかけて,ラットを高酸素暴露することにより低酸素・換気応答が著明に低下した。空気吸入下における換気諸量や血液ガス値(Pa_<CO2>とPa_<O2>)は高酸素暴露群と対照群でほぼ同様であり,差異を認めなかった。発達初期の高酸素暴露による頚動脈小体の機能的遮断により、低酸素・換気応答を構成する神経系の発達可塑性に伴う変化が発生したためと考えられる。
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