GABA受容体のなかのGABA-B受容体は現在でも多くの未解明な部分が残されており、特にその分子構造に関しては私が、本申請をおこなった時点では、未だ解明されていなかったが、昨年(1997年)、スイスの研究グループによって、その構造が、特殊な発現クローニングの手法を用いて、ついに解明されるという事態にいたり、私自身の研究もやや軌道修正をせざるを得なくなった。すなわち、そのアミノ酸一次構造が、解明されたため、カタツムリの巨大神経細胞を用いて、遺伝子構造を解析する必要がなくなり、私の研究も、その次の段階、すなわちGABA-B受容体遺伝子を用いての機能解析、へと進むことが可能となった。そこで、私は初年度の研究目標を、GABA-B受容体を、哺乳類の神経細胞に発現させ、電気生理学的にその機能を調べることが可能な発現系を樹立することとし、これまでに、いろいろな種類の細胞及び遺伝子導入の方法を検討して、以下のような結果を得た。受容体機能を発現させるための細胞系としては、本来は維持管理が比較的容易で細胞の性質のばらつきが少ない腫瘍細胞系が望ましいが、COS cell、HECK cell、あるいはneuroblastoma cellなど、いろいろと検討を加えたが、すべて発現レベルが低く、齧歯類の初代培養神経細胞、特にその中でも、上頚交感神経節ニューロンが、細胞/核の容積比が小さく、遺伝子の核内インジェクションに適していること、シプナス後GABA-B受容体の発現が無いことなどより、最適であると結論された。遺伝子トランスフェクションの方法は、通常行われる電気パルスによる方法が、初代培養神経細胞の場合は細胞障害が大きいため、採用できず、微小ガラス管ピペットを用いて、発現ベクターに組み込んだ遺伝子を直接、細胞の核内に注入する方法をとったが、良好な結果が得られた。
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