研究概要 |
1.心室筋細胞のC1チャネル電流 まずCFTR電流と比較するため、モルモット心室筋細胞にswelling-activated chloride current(I_<C1,swell>)があるかどうかを検討した。その結果従来の報告と異なり、この標本に低張液によって誘発されるI_<C1,swell>が高率に検出されることがわかった。すなわち、I_<C1,swell>とCFTR電流とが協調的に何らかの役割を果たしている可能性が示された。 2.細胞容積調節におけるC1電流の役割の検討 まず細胞容積の変化を測定するための装置を開発した。細胞の厚みを測定するため、細胞上と細胞周囲に微小なマーカーを置き、それらの垂直距離を顕微ビデオ画像上で測定した。すなわち、顕微鏡対物レンズを一定速度(15μm/s)で上下させながらマーカー像の明度変化をビデオ画像上でフォトトランジスターにより測定すると、それぞれのマーカー明度はそれぞれの焦点面上で最も低くなるので、これを利用して(二点測定)それらの垂直距離、すなわち細胞の厚みを知ることができた。この方法は従来の一点測定に比較して信頼度の高いものである。そこで、細胞に低張液を作用させると細胞の厚みが増加し、さらにアドレナリンによりCFTR電流を活性化すると細胞の厚みが減少することが観察された。すなわちCFTR電流は細胞容積調節に関与していることが確認された。次に、細胞を低張液で刺激しながらI_<C1,swell>のブロッカーであるDIDSを作用させると、細胞の厚みがさらに増加することが観察された。これは、I_<C1,swell>も細胞容積調節に関与していることを示すものである。 以上、二種のC1電流が心室筋細胞の容積調節に関与していることが初めて示された。今後は、膜電位測定や電位固定法を併用し、これら電流の生理的役割についてさらに詳しく検討する予定である。
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