心筋CFTR Cl電流の細胞容積調節機能 昨年度の研究で、簡便な細胞厚み測定装置を用いることにより、モルモット心室筋細胞においてCFTR Cl電流が細胞容積調節に関与していることが示唆された。そこでこの現象をより詳しく解析するために細胞容積の変化を精密に測定できる実験方法を開発した。すなわち、CCDカメラで撮影した細胞像をコンピュータで高速処理し、細胞輪郭の占める面積を経時的連続的に算出する新しい方法である。この方法により細胞容積の変化を迅速に観測することが可能になり、次のような研究成果を得た。 低張液を作用させることにより膨張させた細胞において、アドレナリンによりCFTR電流を活性化すると細胞の容積が減少すること(RVD)は、今回の方法によっても確認された。いっぽう、CFTR電流は等浸透圧環境下においても細胞容積を変化させることが見出された。すなわち、さまざまなK濃度の等張外液中で細胞にアドレナリンを作用させると、5〜10mMKの範囲では細胞容積が減少するが、40〜140mMKの範囲では細胞が膨張することが判明した。これらの効果は外液からのClの除去やClチャネルブロッカー、またアセチルコリンによって阻害された。これらの結果は、CFTR電流は背景K電流と協調することにより等浸透圧環境下においても細胞容積を調節しうることを示すものである。別の観点からみると、CFTR電流は細胞内溶質量の調節をしているとも言えるのであって、さまざまな生理的および病態生理学的な意義をもつ可能性がある。 以上、CFTR Cl電流が心室筋細胞の容積調節まはた溶質濃度調節に関与していることが示された。今後は、膜電位測定や電位固定方を併用し、これら電流の生理的役割についてさらに詳しく検討する予定である。
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