1. 心室筋細胞のClチャネル電流 モルモット心室筋細胞にswelling-activated chloride Current(I_<Cl.swell>)があるかどうかを検討したところ、従来の報告と異なり、この標本に低張液によって誘発されるI_<Cl.swell>が高率に検出されることがわかった。 2. 細胞容積調節におけるCFTR Cl電流の役割の検討 細胞容積の変化を観測できる方法の開発を試みた結果、精度の高い方法を開発できた。すなわち、CCDカメラで撮影した細胞像をコンピュータで高速処理し、細胞輪郭の占める面積を経時的連続的に算出する新しい方法である。この方法により次のような研究成果を得た。低張液を作用させることにより膨張させた細胞において、アドレナリンによりCFTR電流を活性化すると細胞の容積が減少すること(RVD)が確認された。いっぽう、CFTR電流は等張環境下においても細胞容積を変化させることが見出された。すなわち、さまざまなK濃度の等張外液中で細胞にアドレナリンを作用させると、5〜10mMKの範囲では細胞容積が減少するが、40〜140mMKの範囲では細胞が膨張することが判明した。これらの効果は外液からのClの除去やClチャネルブロッカー、またアセチルコリンによって阻害された。これらの成績は、CFTR電流は背景K電流と協調することにより等浸透圧環境下においても細胞容積を調節しうることを示すものである。別の観点からみると、CFTR電流は細胞内溶質量の調節をしているとも考えられ、さまざまな生理的および病態生理学的な意義をもつ可能性がある。 以上、二種のCl電流が心室筋細胞の容積調節に関与していることが初めて示された。今後は、膜電位測定や電位固定法を併用し、これら電流の生理的役割についてさらに詳しく検討する予定である。
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