[目的] 電位依存性イオンチャネル遺伝子(cDNA)を生体心筋内に導入して、機能するイオンチャネルをIn Vivoに発現させる。すなわち、(1)心筋に本来存在するイオンチャネルのcDNAを過剰に細胞内に導入して、イオンチャネルの発現量を調節することで心筋の電気興奮性の変化を調節する。(2)心筋に本来存在しない新たなイオンチャネルのcDNAを生体心筋内に導入して心筋の興奮性を変化させる。よって本研究の目的は、イオンチャネルの遺伝子を生体心に導入する事で生体心の本来有する電気興奮性を調節して新たな電気興奮性や筋収縮性を獲得することにある。 [方法] 組み替えアデノウイルスの作成:L型カルシウム(Ca)チャネルのαサブユニットをコードする遺伝子(pCARD)を含むアデノウイルスのウイルス懸濁液を作成する。βサブユニットのcDNAは東京医科歯科大学の田辺勤博士より無償提供されている。サブユニットのcDNAは米国Baylor大学のBirmbaumer博士より無償提供されている。(1)入手したウィルス液は力価が不十分なため、293細胞に感染させ、力価を109 TCID 50/mlまで上昇させる。(2)pCARDはECORIで切り出せるようなプラスミドを作成する。(3)発現ユニットをクローニングサイトに挿入するためコスミドカセットを用いてPCARD1とβ-cDNAを相同組み替えのため293細胞へ導入する。(4)ウィルス液を遠心して蛋白層を取り除きウィルスバンドのみを取り出す。(5)組み賛えウィルスの作成が完成したらバッファーとCsClによる超遠心を繰り返して精製しMOI 500程度の感染粒子を得る。 組み替えウィルスの培養心筋細胞内導入(In Vitro)と機能発現の確認:CaチャネルのαサブユニットのDNAを含む遺伝子を自己DNAの一部に取り込んだ組み替えウィルスのcDNAをラット培養心筋細胞に導入する前に、β-galactosi-daseのDNAを含む遺伝子を自己DNAの一部に取り込んだ組み替えウィルスをラット培養心筋細胞に導入し、X-Gal染色法にてその発現を確認する。 [結果] (1)β-galactosidaseのDNAを含む遺伝子を自己DNAの一部に取り込んだ組み替えウィルスは、力価108 TCID50/ml濃度で作成された。(2)In Vivoのラット心筋細胞へのイオンチャネル遺伝子導入の前段階として、ラット培養心筋細胞へのβ-galactosidaseのDNAの導入効率を測定したところ99%(n=12)もの高確率で形質導入が可能であった。しかるに、In Vivoのラット心筋細胞への形質導入は、発現効率10%程度に留まっていた。(3)線維芽細胞の細胞全体電流記録によると、-20mV付近より活性化される内向き電流が記録されるため、Caチャネル遺伝子導入による電流発現が確認された。(4)ラット培養細胞の細胞全体電流記録によるとCa電流密度の上昇が認められたが、明確なキネティクス変化は出現しなかったため、導入遺伝子の高度発現を目指す必要性が示唆される。
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