研究概要 |
単球は炎症刺激を感受して循環血から血管壁を通過して組織・器官に浸潤し,多機能性ファゴサイト(食細胞)であるマクロファージに分化する.マクロファージはさらに炎症刺激を受けて食作用,免疫細胞の活性化,細胞傷害性を発揮する.本研究では,バクテリア外毒素の成分であるリポポリサッカライド(LPS)による炎症刺激に対して単球・マクロファージ系がどのよに反応するかを,細胞内カルシウムイオン濃度([Ca^<2+>]_i)上昇でとらえ,さらに分化過程における反応性の変化をしらべた.ヒト末梢血を遠心分離し,ガラスシャーレへの接着性を利用して単球画分を得,培養系に持ち込んだ.[Ca^<2+>]_iはCa^<2+>結合性蛍光指示薬fura-2を細胞内に取り込ませ,蛍光強度の変化を画像解析装置で記録し,以下の結果を得た. 1) 単球・マクロファージ系細胞はLPSそのものによってはCa^<2+>増加反応を示さなかった. 2) LPSに対する細胞表面認識分子とされるCD14を抗CD14抗体で刺激すると,約45%の細胞が持続数分の一過性のCa^<2+>増加反応を示した.血清や補体の投与でも同様のCa^<2+>増加反応が誘発された.LPSは血漿中の他の分子を介してCD14と結合すると考えられる. 3) マクロファージを長期培養するのに必要なマクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)を投与すると,約25%の細胞でCa^<2+>増加反応がおこるが,多くは起こらない.M-CSF存在かで培養すると細胞は大きなマクロファージに分化した.培養日数をおって,CD14に対する刺激に応ずる細胞数が90%に増加し,反応のピーク[Ca^<2+>]_i、値が増強した.また45%の細胞でLPSに直接反応してCa^<2+>増加反応を示した. これらの実験により,マクロファージは炎症刺激に対して[Ca^<2+>]_i上昇をもって反応すること,分化が進行する過程で刺激受容体の発現および結合性が増強することが示された.
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