研究概要 |
本年度は主としてラット膀胱平滑筋のヌクレオチド受容体の単離平滑筋細胞を用いた薬理学的特性の検討と受容体遺伝子のクローニングを行った。本受容体の薬理学的特性の検討では200g前後のWistar系雄性ラットより摘出した膀胱から酵素処理により平滑筋細胞を単離し、fura2-AM存在下で細胞をincubateしfura2を負荷し各種アゴニスト投与による細胞内Ca濃度上昇を顕微測光で測定した。その結果、本受容体のアゴニスト順位はATP>UTP>>ADP=ADPβS>UTP>α,β-Me ADPであることが判明した。このような順位は現在までに報告されているどのヌクレオチド受容体のものとも一致しないことから新たな受容体の可能性が示されたので、受容体遺伝子のクローニングを行った。ラット膀胱よりPolyA^+RNAを抽出し、ランダムプライマーを用いたRNAの逆転写反応によってcDNAを調製した。Gたんぱく共役7回膜貫通型ヌクレオチド受容体の第2並びに第7膜貫通部位のDNA情報からdegenerateプライマーを作製してcDNAを鋳型にPolymerase Chain Reaction(PCR)を施行した。得られた約700bpのPCR産物をシーケンスした結果、ラットのP2Y2プリン受容体と一致するアミノ酸配列を持つことを確認した。このP2Y2受容体の前半部約600bpは報告されている配列を参考にプライマーを作製してPCR法を用いてクローニングを行い、後半部は3'RACE法を用いてクローニングした。その両者に特徴的な制限酵素部位を用いて結合して約1700bpのP2Y2受容体遺伝子をクローニングした。次にこの受容体遺伝子の機能を細胞に発現させるために、このP2Y2受容体遺伝子をクローニングベクターから発現ベクターに移し変え、プリン受容体が発現していないと報告されている1321N細胞に現在導入中である。
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