研究概要 |
腎尿細管での各種電解質輸送には尿細管細胞の膜電位がその駆動力として重要であり、膜電位の形成ならびに調節はイオンチャネルの機能に大きく依存している。本研究ではとくに近位尿細管細胞の膜電位形成に重要な尿細管基底側膜のK^+チャネルの分子制御機構を明らかにし、近位尿細管全体の機能調節について検討した。まず、培養オポッサム腎近位尿細管細胞を用いた研究にて、このK^+チャネルがcAMP依存性キナーゼ(PKA)によって活性化し、Ca^<2+>依存性のあるCキナーゼ(PKC)で不活性化することを見いだした。即ち、このK^+チャネルは2種類の異なった蛋白燐酸化により調節されていることが解り、それらの結果を報告した(Kubokawa et al,1997).また、食用蛙腎近位尿細管を用いた実験にて基底側膜のK^+チャネルがpH感受性を有すること、ならびにこのK^+チャネルが膜電位を決定する要因になっていることを証明した(Kubokawa et al,1998).その後、心房性Na^+利尿ペプチドが培養オポッサム近位尿細管細胞のK^+チャネル活性を上昇させ、それがcGMP依存性キナーゼによる蛋白燐酸化によるものであることを明らかにした(Kubokawa et al,1998).以上より、食用蛙近位尿細管基底側膜の膜電位は主にpH感受性K^+チャネルによって形成さていること、ならびにオポッサム近位尿細管細胞を用いた実験にて、基底側膜のK^+チャネルは少なくとも3種類の蛋白燐酸化酵素によって調節されていることが解った。 最近、オポッサム近位尿細管細胞のK^+チャネルについて脱燐酸化酵素による調節についても検討し、フォスファターゼ1型および2A型がPKAによる蛋白燐酸化に拮抗してK^+チャネルを不活性化することを見いだした。今後、PKCに拮抗するフォスファターゼについても検討し、その調節機序の全貌を明らかにしたい。
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