骨格筋において細胞膜の電位依存性L型カルシウムチャネル(ジヒドロピリジン受容体DHPR)と筋小胞体のリアノジン受容体は興奮収縮連関の中心的機能を果たしている。この2つの分子は蛋白どうしが結合して情報伝達を行っていると考えられているがその分子機構は明らかになっていない。この実験の目的はYeast two hybrid systemを用いて、L型カルシウムチャネルとリアノジン受容体の物理的な蛋白蛋白結合を明らかにすることで、平成9年度はL型カルシウムチャネルとリアノジン受容体の蛋白蛋白結合実験を行ない、平成10年度は骨格筋よりcDNAライブラリーを作製し、DHPRと結合する新たなタンパク質の検索を行った。 平成9年度:以前の実験から結合部位を予想し、DHPRα1sのアミノ酸番号719-767をもつDNA結合ドメインプラスミドs53と骨格筋型(RyR-1)および心筋型(RyR-2)リアノジン受容体の一部をアクチベータードメインに持つプラスミドsR16(RyR1の1837-2168)とcR16(RyR-2の1817-2142)を作製し、ヒスチジン欠損培地でYeastを培養したところ、sR16とs53の両方を持つYeastのみコロニーの発育が認められた。しかし、β-galactoshidase活性の測定ではいずれの組み合わせでも活性は認められなかった。栄養要求性実験とβ-galactoshidase活性の測定で食い違いがあり、DHPRとリアノジン受容体のあいだの物理的な結合を証明することはできなかった。 平成10年度:DHPRのN末、I-IIループ、II-IIIループ、III-IVループ、C末の配列を組み込んだ5つのDNA結合ドメインプラスミド作製し、アクチベータードメインプラスミドには骨格筋のcDNAライブラリーを組み込み、両者の間で相互作用がおこるcDNAの単離を行った。その結果、I-IIループと結合するcDNAとして電位依存性カルシウムチャネルのベータサブユニットが単離された。またN末、II-IIIループ、III-IVループと結合するcDNAは単離できなかったが、C末と結合するcDNAとしてトロポニンTを単離した。興奮収縮連関におけるトロポニンTの生理的意義は明らかではないが、トロポニンTがイオンチャネルの局在化に関係している可能性が示唆された。
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