| 研究概要 |
ビタミンA(以下A)の吸収が消化管において、どのような細胞・分子機構でおこなわれているのかを明かにする目的で、本研究は行われた。ウイスター系雄性ラットにレチニルパルミテート5万I.U./0.5mlコーンオイルを胃チューブによって投与した。投与して、3,6,24,48,96時間後および1週間後に動物をエーテル深麻酔によって処置し、空腸および回腸を採取して、H.E.染色、脂肪染色、蛍光顕微鏡によるA自家蛍光観察、透過型および走査型電顕により解析した。また、抗デスミン抗体と抗α-平滑筋アクチン抗体を用いた免疫蛍光法、免疫組織化学によっても解析した。デスミンとα-平滑筋アクチンは肝臓にあるビタミンA貯蔵細胞(星細胞)の特異的マーカーである。
対照群の空腸粘膜固有層にはわずかながら、Aの自家蛍光がみられた。A投与後3時間で空腸の吸収上皮細胞内にびまん性に強いAの自家蛍光が観察された。投与後6時間では蛍光が空腸と回腸に、回腸よりも空腸に一層強く、しかも吸収上皮のみでなく粘膜固有層にも観察され、粘膜固有層の蛍光は多数の点状であった。24,48,96時間後および1週間後には吸収上皮内は陰性になったが、粘膜固有層には点状に多数の蛍光が存在していた。電顕では小腸基底膜に小孔が多数存在し、粘膜固有層の線維芽細胞様細胞およびマクロファージ様細胞の細胞質に多数の脂質滴がみられた。免疫蛍光法では線維芽細胞様細胞はデスミンとα-平滑筋アクチン陽性であった。
以上のデータは小腸吸収上皮はAを効率よく吸収すること、および消化管粘膜固有層にはAを貯蔵する細胞系が存在することを示唆している。この細胞系は肝臓外星細胞系に属し、肝臓外にあってAの生体におけるホメオスターシスの制御を行うことが示唆された。
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