運動は、肥満・高脂血漿の予防治療に有効でことが経験的に知られている。しかし、運動が総エネルギー代謝および糖・脂肪・蛋白質の燃焼比率の中枢生調節機構をどのように修飾するのかするか不明な点が多い。昨年度の研究では、交感神経系が運動中および運動後のエネルギー源としての糖・脂肪の燃焼比率に影響していることを明らかにした。本年度は、昨年度の実験の例数を追加した。また、人為的に体内の糖代謝をブロックして運動後と同じ状態を作り交感神経活動とエネルギー代謝について検討した。ラットをトレッドミルで持続的に運動できるように訓練し、最大酸素摂取量の80%の強度の運動を30分間行わせた。 結果、糖質と脂質の燃焼比を示す呼吸商は、運度後に0.75±0.01と有意に低下した。腎交感神経活動は、対照期を100%とすると運動中141.5±10.7に有意に上昇し、運動後に2時間にわたり69.7±10.4に減少した。次に、2-deoxy-D-glucose(2-DG)を静脈内に投与して糖代謝を阻害した。結果、2DG投与により呼吸商は投与前の値0.83±0.02から0.72±0.01に低下した。腎交感神経活動は、2DG投与により一過性に上昇したが、後約50%持続的に低下した。以上運動による体内利用可能な糖の減少は、交感神経系を抑制し糖の代謝を抑制していることが示唆された。また、体内の利用可能な糖のレベルをなにがモニターして中枢に情報伝達を行っているのかということが新たな疑問点として生じた。
|