研究概要 |
1.糖質消化吸収関連遺伝子プロモータにおける核内因子結合領域の検索:ラットのラクターゼ・フロリジン水解酵素(LPH)およびスクラーゼ・イソマルターゼ複合体(SI)遺伝子のプロモータDNA断片をクローニングした。DNaseIフットプリント法およびUVクロスリンク法により、ラットLPH遺伝子のTATA box直上流にブタでみられたNF-LPH1結合領域(CE-LPH1)が存在し、ホメオドメインタンパク質Cdx-2と類似の因子が結合することを示した。ラットSI遺伝子のTATA box上流にもCdx-2結合領域(SIFl)と複数のHNF-1結合領域(SIF3,SIF4)が存在していた。 2.発達に伴うラクターゼ遺伝子発現の減少におけるCE-LPH1の関与の検討:離乳前と成熟期のラットの小腸各部位から核を調製し、CE-LPH1と結合する核タンパク質の量をゲルシフト法によって検討した。離乳前に比べて成熟期では、LPHmRNA量が減少し、CE-LPH1に結合する核タンパク質量も著名に減少していた。 3.糖質摂取に伴う糖質消化吸収関連遺伝子の発現変動と関連する核内因子の検討:成熟ラットを低糖質食で1週間飼育すると、LPHとSIの転写速度が低下し、CE-LPH1あるいはSIF1に結合する核タンパク質の両方が平行して減少した。果糖添加食の経口投与により速やかにLPHとSIの転写速度が上昇し、SIF1と結合する核タンパク質の量も増大した。代謝されない糖質ではLPHとSIのmRNA量の発現は変動しなかった。従って、糖質の中間代謝産物がCdx-2あるいはそれと類似の転写調節因子を介してLPHとSIの転写を共通の機構で調節すると推察した。 4.SIの翻訳後修飾を介して栄養素(脂質)がスクラーゼ活性を変動させる機構の検討:高脂質食で飼育したラットの空腸から精製したSIは、複合型糖鎖結合性レクチン(RCA_<120>,PHA-L_4)との結合性が低下し、スクラーゼ活性が低下していた。脂質は糖転移反応の阻害によりスクラーゼ活性を選択的に減少させることが示唆された。
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