研究概要 |
1.糖質消化吸収関連遺伝子の小腸における発現と関連する転写調節因子結合領域の検索:ラットフルクトース輸送体(GLUT5)遺伝子上流域をクローニングした。この領域に甲状腺ホルモン応答領域TREが想定されたので、甲状腺ホルモン核内受容体TRα-1とTRα-2のcDNAをクローニングし、in vitro転写・翻訳させた。TRα-1はレチノイド核内受容体RXRαとヘテロダイマーを形成して典型的なTREエレメントに結合したが、TRα-2はTREエレメントに結合できなかった。また、ラットHNF1αのcDNAをクローニングした。 2.発達に伴う糖質消化吸収関連遺伝子の発現変動と関連する転写調節因子の検討:離乳前と離乳期のラット小腸における各種の糖輸送担体(GLUT5、SGLT1、GLUT2)のmRNA発現量を測定した。離乳に伴い、空腸の糖輸送担体mRNA量はいずれも増大し、TRα-1mRNAの発現量の増大と平行していた。一方、離乳期には、Cdx-2、HNF1αおよびTRα-2のmRNA量に大きな変動は見られなかった。従って、小腸の発達に伴う糖輸送担体発現量の平行した増大は,TREへのTRα-1結合量の増大によって起こるものと考えられた。 3.糖質摂取に伴う糖質消化吸収関連遺伝子の発現変動と関連する転写調節因子の検討:成熟ラットに高糖質食を投与したところ、空腸のCdx-2mRNA量が増大し、スクラーゼ・イソマルターゼ複合体(SI)遺伝子プロモータのSIF1領域に結合するCdx-2量が増大した。食事摂取の日内リズムに同調してみられるSImRNA量の変動には、SI遺伝子のSIF3領域(HNF1αが結合)への核内夕ンパク質の結合量の変動が対応していた。 4.小腸の培養系を用いる糖質シグナル因子の検討:ラットより切りだした回腸をUssing chamberにはりつけ培養条件を検討した。粘膜側の溶液にフルクトースを添加したところ、2時間後には、グルコースを添加した組織に比べ、スクラーゼおよびSGLT1mRNA発現量が増大していた。従って、小腸吸収細胞は、管腔内の糖質に直接応答し、糖質の消化吸収に関連する複数の遺伝子を同時に制御することで対応することが示唆された。
|