研究概要 |
骨格筋の疲労のうち化学・力学エネルギー変換系の変調の機序を、大沢が提唱する新しい筋収縮モデルの見地から検討した。 筋収縮の直接のエネルギー源をATPの加水分解エネルギーでなく、収縮タンパク系の中にある「熱溜め」におく大沢のモデルに則ってド-ソンらのNMRによる研究結果を解釈すると、疲労筋と2,3-ブタンジオンモノオキシム(BDM)の骨格筋に対する効果は、全く区別できない物であることが明らかになった。そこで疲労筋の分子形態と、BDMにより収縮を可逆抑制された骨格筋生筋の分子形態をX線回折法を用いて比較検討した。1)電気刺激により生筋を収縮させ、静止状態と収縮中の分子形態を追跡した。研究室現有のX線源で、静止時のフィラメント間隔と赤道反射強度比(1,0/1,1)の疲労進行時の変化と、BDM処理により収縮が抑制された筋の赤道反射強度比の変化の比較検討を行った。さらに詳細な静止時の分子形態と収縮中の分子形態は、高時間分解能を得るために、高輝度光科学研究センター(Spring-8)の高輝度シンクロトロン放射光を利用して観察した。2)BDMは、収縮タンパク系のみならず、興奮収縮連関にも作用を及ぼす。BDMの収縮タンパク系への作用だけを見るためにスキンドファイバーでも同様に分子形態を観察した。従来の疲労筋モデルとしてド-ソンら(1978)の報告にあるpH、リン酸化合物濃度に合わせた人工細胞内溶液においたスキンドファイバーと人工細胞内液中にBDMが存在するスキンドファイバーのX線回折像の比較検討を行った。
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