研究概要 |
(1) Neck suction(NS)法を用いた選択的頚動脈洞圧受容器(CBR)反射機能評価とPhenylephrineを用いた薬物負荷法とを比較し,両者によるCBR感受性(CBRS)が正の一次相関関係にあること,血圧変化で脈圧が頚動脈洞圧受容器への刺激入力であることを証明した.さらに頚動脈洞圧受容器には圧変化速度に対する応答特性があることを証明し,圧受容器反射機能では血圧変化速度を考慮した評価が必要なことを報告した. (2) 起立耐性低下による循環動態破綻の結果は失神としてとらえられる.起立負荷時には交感神経活動でる血管運動性α作用の増強が血圧維持に機能するが,α作用以外にもβ作用の関与が重要なことが知られている.失神例では起立負荷時の圧受容器反射を介する自律神経活動で,交感神経活動(血管運動性α作用)以外の因子が血圧維持により大きく関与することが考えられた. (3) 起立負荷によるcentral hypovolemia時には,圧受容器反射抑制を介して,心臓迷走神経活動は早期に抑制され,血管運動性交感神経活動は負荷後3分前後にピークとなる亢進を示す反射性調節が起こることを明かにした.以上より,体位変換による体液移動を用いた負荷では,圧受容器反射を介する自律神経活動は,心臓迷走神経活動,血管運動性交感神経活動およびこれ以外の交感神経活動が複雑に影響して調節を行っている.従って,cardiovascular deconditioning時における圧受容器反射機能評価では,基礎の自律神経活動,血圧変化速度,評価に用いるべき血圧指標を十分に検討した上で解析する必要がある.
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