研究概要 |
4時間の6゚ヘッドダウンベッドレスト(6HDBR)と,続いて1時間の水平位ベッドレスト(OBR)を行い,体循環動態と脳循環動態における神経性調節の急性変化をネックサクション(NS)負荷を用い検討した. (1) 体循環動態における神経性調節の急性変化:NS負荷前における安静状態の心拍,血圧は全経過で変化がなく,体位変換による体液シフトに対して液性および神経性調節がなされた結果と考えられた.液性調節では,6HDBRとOBRで差がなく,体位変換の経過時間でバソプレシンおよびノルアドレナリンは低下した.これに対してNS負荷による選択的頚動脈洞圧受容器(CBR)刺激では,その感受性(CBRS)は6HDBRの時間経過とともに亢進し,OBRで減弱した.CBRSの急性変化では6HDBRとOBRで異なり,6度の変化の体液シフトに対して神経性調節が反応することが示された.しかし,CBRに対する血圧変化速度の応答特性は変化がなく,この応答特性は交感神経抑制と副交感神経亢進という基礎活動時には影響されないことが推察された.以上の結果と長期6HDBRの慢性変化を合わせて考えると,CBRSは急性変化と慢性変化で同じ亢進を示すが,その亢進の機序が異なること,6HDBRからOBRへの移行であってもCBRSが変化することから慢性変化のCBRS評価では,-6゚と水平位での評価が必要なことが明かとなった. (2) 脳循環動態における神経性調節の急性変化:選択的CBR刺激となるNS負荷により中大脳動脈血・流速度の低下とpulsatility indexの増加が認められ,CBR刺激により脳血管は収縮性に変化する.経時的6HDBRの急性変化およびOBRでも,この脳血管の反応性に変化がなかった.長期6HDBRの慢性変化では,CBR刺激に対して血圧依存性の高い脳血管反応性が認められたのに対して.急性変化では認められず,慢性変化に特有の反応と考えられた.
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